小川香料に聞く(2)ミントの香りを科学する

2017.12.04

 ミントの香料を作るには、原料に関する知識はもちろん、香りを構成する成分や、人が香りを感じるメカニズムなどの科学的な知識が不可欠です。前回に続き、香料メーカー大手、小川香料の小原さん、宮澤さん、糸部さんに、科学的な視点からミントの香りの秘密を伺いました。

メントールの分子模型

メントールの分子模型

ミントの香りは何色?

 香料に使われるミントは大きく分けて、ペパーミントとスペアミント、和種薄荷の3種類。シニアフレーバリストの小原さんは、「甘さや苦み、清涼感や爽やかさを感じさせるグリーンノートなど、それぞれのミントの香りを特徴づける成分は何か、全体の香りにどのくらい影響しているのかといった分析データをフレーバー作りに応用しています」と話します。

 多くの香りを認識できるというフレーバリスト(調香師)の技術も、科学的な知識に基づいています。「就職活動で初めて香料会社の存在を知った」と笑う糸部さんは、中堅サイエンティスト。「新人研修で多くの基本の原料を覚えました。化合物の構造によって香りの特徴も違う。化学式を少し変えるとどんな変化が起こるのか、まったく違う香りを混ぜるとどうなるかなど、一つ一つ覚えていきます」

絵の具の色を混ぜ合わせるように香りを作る

絵の具の色を混ぜ合わせるように香りを作る

 中には、香りをかいだだけで化学式が頭に浮かぶ人も。難しそうですが、先輩でフレーバーサイエンティストの宮澤さんは、「香りを覚えるのは、絵の具の色を覚えるようなもの」と言います。「基本の色を覚え、次に赤と青を混ぜたらどんな色ができるかやってみる。色を使いこなせるようになるまでに10年はかかります」

いつミントフレーバーを感じるのか?

 「食品は、口に入れて初めて味と香りの両方を感じると言われます」と宮澤さん。「例えば、ミントガムに鼻を近づけても、香りはほのかに感じられるだけですが、口に入れて噛(か)むことで、香りはのどから鼻へと戻っていく。これを「戻り香」と言い、食品の重要な要素です。風邪をひくと味がわからなくなるのは、鼻が詰まって香りを感じられなくなるからなのです」

口の中から鼻へ入っていく香りを「戻り香」という


 フレーバーを感じるのは、味覚、嗅覚(きゅうかく)のほかに、熱い、冷たいと感じる「三叉神経によって知覚される体性感覚」があります。「ミントの清涼感を感じるのは三叉(さんさ)神経の働きのためです。口に入れたとき、この3つの感覚がどう働くのかも考えながら調香しています」と宮澤さん。

 香りを感じるタイミング(フレーバーリリース)も重要です。「ミントガムを噛んだときのフレーバーも、最初に一気に感じられるのか、長い時間、少しずつ感じ続けるのかは、香りの成分によって大きく異なります」とフレーバーリリースを専門に研究する糸部さんは言います。「粉末なのか液体なのか、香料の形態もフレーバーリリースを左右します。どういう加工をすれば最初に香りを強く感じるのか、あるいは長く続くのか、商品の特徴づけにも応用できます」

ミント系のガムを噛んでいるときの香りの持続性を成分ごとに表したグラフ。縦軸がガムに含まれる香り成分。種類によってフレーバーリリースが大きく異なることがわかった
Kenji Kumazawa, Takafumi Itobe, Osamu Nishimura, and Takashi Hamaguchi; A New Approach to Estimate the In-mouth Release Characteristics of Odorants in Chewing Gum. Food Sci. Technol. Res., 2008, 14(3), 269 – 276

 あらゆるデータをもとに細部まで緻密(ちみつ)に計算しつくされたミントフレーバー。食べるときに意識をしてみると、面白い発見があるかもしれません。

小川香料に聞く(1)ミントの香りができるまで」はこちら

小川香料株式会社
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