パクチーを追い越せ!! 第1回 ミント食べ合わせ選手権

2018.03.30

 昔はただの「なんか匂いのきつい葉っぱ」として、中華料理やエスニック料理のアクセサリー扱いだったパクチー(香菜・コリアンダー)が、すっかりおしゃれな料理に欠かせない存在になって久しい。
 ミントの代わりにパクチーを入れたモヒートなんてものもあるようで、着実にミントの領域が侵されつつある。「このままミントの存在感が薄れていってもいいのか!」という危機感を抱いた「ミントの世界」編集部は、ミントのポテンシャルを引き出すための企画に取り組むことになった。
 それが「ミント食べ合わせ選手権」だ。

ミント食べ合わせ選手権とは!?

 今回参加したのは「ミントの世界」編集部とその周辺から、20~30代の男性5名。ミントにこだわりがあったりなかったりする面々がそろっている。ふだん、料理をしたりしなかったりする連中が、無い知恵を絞り尽くす!
 ルールは単純。ありそうでない、ミントと別の食品(食材)を組み合わせた「これは!」と思う一品を5名が順番に提案していく。それを提案者以外の4名が試食して、日常的に食べるのが「あり」か「なし」か、判定する!
 シンプルな組み合わせでもかまわないが、調理したものと合わせて、それなりの一品になっていることが条件だ。
 ここで、5名の参加者を紹介しよう。


Y記者
 家庭のある常識人だが、時折油断ならない提案をしてくる。『ジョジョ』は第3部派(※1)。とくにミントにこだわりはなく、今回もなんとなく、決定戦に参加させられてしまったが、きちんと準備をしてきた。
(※1)荒木飛呂彦先生の大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのこと。第3部は1990年代前半ごろ、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載。ようするに、それをリアルタイムで読んでいた世代。


営業部のT君
 爽やかな好青年を装っているが、笑顔で何を言うかわからないニトログリセリン(※2)の原液のような男でもある。ふだんはミントをあまり食べないらしいが、今回の決定戦を機にミント好きに生まれ変わる。
(※2)ニトログリセリンは、ダイナマイトの原料。原液のままでは、わずかな衝撃で爆発する可能性も。正しく扱えば爆発しません。


デザイナーのK君
 美大卒。仕事柄、感度の高い提案をしてくるかと思いきや、感度が高すぎて常人の追いつけないステージに達することも多い。今回の決定戦で、彼のセンスとミントは一体、どんな化学反応を見せてくれるのか。


A記者
 「子どもの頃は『チョコミント』がミントとチョコの組み合わせだと知らず、そういう食材があると思っていた」という謎のエピソードを持つ。真実を知った本人は「ミントの裏切り」だと思ったらしい。大丈夫か。


W記者
 「ケーキやアイスにのっているミントは必ず食べている」などと言っているが、モヒートに入っているミントは残しているらしい。決定戦への参加を打診すると、「とりあえず1週間後、もう一度来てください。本当のミント料理をご覧に入れますよ」と言い放った。いや待て、決定戦は今日だぞ。

1. ミント卵焼き


 1品目はY記者の「ミント卵焼き」。

Y記者「卵焼きの中に、ミントを入れました。卵焼きって、いろんなものを入れることが多いじゃないですか。でも、ハズレな味になることは絶対ないので、ミントでもいけるかなと。それが選定の理由ですね。ただ、できあがったものを切ってみたら、中が紫色になっていて、自分でもちょっと引きましたけど(笑)」
W記者「たしかに、色がちょっとね……」
K君「でも、卵とミントの組み合わせって、タイ料理とかでありそうじゃないですか?」

 意外にも、出だしからイケそうな予感がするが、その味はどうなのか。いざ、実食!

T君「……タイ料理、ではないですね」
A記者「うん。ミントと卵焼きですね」
K君「なんか合ってないわけではないのに、噛み合ってないような、しっくりこない感」

W記者「なくはないけど……。ミントと卵が最後まで一緒にならなくて、どこまで食べてもミントと卵焼き」
K君「『あっ、うん』って感じ。積極的に毎日食べたい、とは思わないですね」
Y記者「なんか、記念すべき1品目なのに、評価が辛くない?(笑) みんなの反応を見ると、ナンプラーとかを入れて、アレンジしてもよかったかなあ」

 もともとの卵焼きのポテンシャルが高い分、食べられないようなものにはならなかったものの、ミントがなじまず、「あり」ではないが、「なし」でもないという、微妙な判定に。タイ料理に寄せるというかたちで、ナンプラーを入れる、唐辛子で辛くするといった変化球を取り込めば、もう少し評価が変わったかもしれない。

2. ミント牛乳

 続いて、2品目はT君から、「ミント牛乳」。

T君「イチゴやバナナのフルーツ牛乳(フルーツ入り乳飲料)って、おいしいじゃないですか。だから、牛乳との組み合わせは、絶対ハマると思うんですよ。今回は、牛乳にミントを浮かべただけでは、文字通りミントが浮いた牛乳にしかならないので、煮立ててきました。見た目もおしゃれな感じでしょ」
K君「おしゃれなのは、2~3枚浮いてるときでしょ!」
Y記者「それは、フルーツとの組み合わせだからおいしいんじゃ……」
W記者「まあでも、チョコミントからカカオ分が抜けたら、これなんじゃない?」
Y記者「違うと思いますよ(笑)」

 第一印象はそれなりに「あり」な一品。新たなミルク飲料の誕生となるのか。さあ、みんなで飲んでみよう!

K君「!? これは、ダメなやつ」
Y記者「エグい……」
W記者「牛乳の乳臭さにミント臭がかぶってくるのがキツい」

 満場一致で「なし」かと思われたが、異論が出る。
A記者「いやこれ、『あり』でしょう! 全然いける味ですよ! ちょっと癖はあるけど、できそこないのチャイみたいなもんです」
W記者「できそこなったチャイって、おいしくないのでは?」
Y記者「A記者は味覚がヤバイんじゃ……」

 ストレートに「なし」かと思われたが、できそこないのチャイ説によって、「あり」との声も出たため、やや「あり」寄りの「なし」という、これまたスッキリしない判定となった。この後も、こんな感じで終わってしまったら、どうなるのだろうか。
 ただ冷静に考えてみれば、ミントを煮出すのはミントティーと同じ。煮出す条件やミントの茶葉を加える、ミント以外の素材を投入するとかすれば、できそこないのチャイ以上のものになる可能性はありそうだ。

3. ミントとご飯が何杯でも食べられるやつ


 3品目はK君の「ミントとご飯が何杯でも食べられるやつ」。一体、何言ってるんだ!?

K君「ぼくの提案は、ミントに麺つゆとごま油をかけたものです。今までの失敗をみると、やっぱりそれなりにおいしいものとミントを組み合わせたほうが、成功率は高いと思うんですよね。これなら、いけるはず!」
W記者「自信満々だな。なんで?」
K君「麺つゆとごま油をかければ、なんでもおいしくなって、ご飯何杯でもイケるじゃないですか。ミントはシソ科らしいので、シソだと思って、麺つゆとごま油をかければ……」
A記者「天才なのでは!」

 かなり緻密に考えて作られたこの一品。これまでの中で最も期待できる。アツアツのご飯にのせて、いざ実食!

W記者「なんというか、期待値が高すぎて、食べたら『普通』ってなる」
Y記者「今までの流れから考えると、『おっ、けっこういける』という感じなんですけどね」
A記者「意外にミント感が抑えられてて、違和感なく食べられるのに、心の中のハードルが越えられてない」
T君「ご飯は、おいしいです!」
K君「ちょっと待った!! なんか、低評価みたいになってるけど、理由が理不尽じゃないですか? 提案者は食べないというルールで進んできましたが、ちょっと食べさせてください。うん。やっぱり、麺つゆとごま油、合ってると思います。こういうサラダがお店で出たら、ぼくは残さず食べますよ」

 実食前のインパクトが強すぎたせいで、「おいしいんだけど……」という微妙な判定となってしまった。ただ、K君が一生懸命にフォローしていたように、ミントとごま油がマッチしていたから、和風ミントサラダと考えれば、けっこう「あり」かもしれない。だが、今回の決定戦的には「普通」ということに。

4. ミント味噌汁


 4品目は、危険な味覚を持つA記者が提案する「ミント味噌汁」。

A記者「味噌汁って、ネギなどの薬味が味を引き立てますよね。代わりに、ミントを使ってもいいんじゃないかと考えました。今回は、ただのっけるだけではなくて、やっぱりミントをしっかり味わいたいなと思いまして。だしとドライミントをしっかり煮込んでから、味噌をときました!」
Y記者「さっきのT君の牛乳と同じ発想だな(笑)。別に、薬味として、味噌汁の上にのっけるだけでも、いいんだよ! すでに、立ち込めるミントの香りが、なんとも言えない」
W記者「うん。だしの香りの裏から、ミントティーの香りがするのがすごい非日常感……。もうヤバみしかないけど」
K君「これ本当に匂いで、もうアカンやつだと思いますよ」

 薄々先が読めているが、実食してみよう。

T君「うっわ……まっず……」
Y記者「びっくりするぐらい、だしと味噌とミントが合ってない」

 コメントのボキャブラリーが、一気に低下するほどに、インパクトのあるマズさのようだ。

K君「これは、本当にやっちゃダメですよ。ただただマズい」
W記者「ミントティー的なミントのコクみたいなのが、だしの風味で包まれてるところが余計に気持ち悪い」
A記者「そんなにマズいですかね!?」
W記者「さっきの牛乳が、けっこうおいしいチャイに思えてくる」
A記者「ビールにミントを入れるっていう案もあったんで、さっきこっそり飲んだら、普通にミントの香りがするビールでしたね」
W記者「何、こっそり飲んでるんだよ! というか、おいしいんだったら、絶対そっちを提案するべきだったでしょ、これ!」

 あいまいな評価が続いた中で、ようやく直球の「なし」判定が下った一品だ。ミントと魚介系の相性が悪いわけではないと思うのだが、だしとミントが合わない。かつ、味噌の風味とミントの風味もまったく一体感がなく、ともかくひたすらマズかった。
 たとえば、魚介系の具が入ったところに、サンショウの葉のような香りづけ的ポジションで置かれれば、「あり」だったのかもしれない。いずれにしても、そのまま具として煮込むのは、無謀だったようだ。

5. 塩辛ミント


 今回の決定戦のトリを飾る5品目は、W記者が提案する、イカの塩辛にミントをのせただけの「塩辛ミント」。

W記者「選定の理由としては、ミントはシソ科の植物だし、発酵食品の臭みを消せるのではないかと、ひらめいたんです。たとえばタイの料理なら、魚介系の発酵食品とミントの組み合わせって、ありそうじゃないですか。ナンプラーだって、魚を塩漬けして、発酵させてるわけだし」
K君「なんか、これまでに聞いたようなことしか言ってない」
T君「でも、見た目はグロいですね」
Y記者「匂いはぜんぜん、食欲をそそらない」
 塩辛の生臭さにミントの爽やかな香りが重なって、味噌汁の二の舞いを予感もさせるが、どんな評価が下るのか。そして、最後の実食へ。

A記者「あっ、これかなりおいしい!」
T君「見た目はヤバかったけど、食べてみると塩辛とミントって、けっこう合ってますね」
 諦めムードだった場の雰囲気が変わった。

K君「塩辛のクセとミントの香りが、うまいことつぶし合いましたね。普通に小洒落た居酒屋で一品として出てきそう」
A記者「いやー、これ、本当にうまいですよ! ミントがおかずになった感じで、米にも合いますし」
W記者「なんか、いつの間にか、ご飯と一緒に食べてるし! まあ流れ的に、最後の海原雄山(※3)にハズレはないですからね。あと、納豆に入れても、うまいです」
A記者「ミントビールにも合いそうですね、ミント塩辛」
W記者「ちょいちょい、ビール挟んでくるな」
(※3)『美味しんぼ』(小学館/作・雁屋哲、画・花咲アキラ)より。主人公の山岡士郎の「究極」と、実父である海原雄山の「至高」の対決が読みどころ。料理漫画では、料理対決をする場合、後攻が勝つことが多い。

 実食前の微妙な空気とは裏腹に、奇跡的なマリアージュで高評価を得たミント塩辛。かなり多めのミントに塩辛を少し和えるだけでも、ミントをおいしく食べられる。今回は塩辛の上にミントをのせたが、大根おろしの上に塩辛をのせて出てくる居酒屋もあるから、あのイメージで、ミントの上に塩辛をのせてもよさそうだ。

ポテンシャルは高いが、工夫が必要か

 「第1回 ミント食べ合わせ選手権」は、いかがだっただろうか。総じて、和食系の組み合わせが多かった。これは洋食の場合、ミントとの組み合わせが、世の中にはけっこうあるので、「すでにある」ものを回避しようとした結果だ。

 ストレートにマズいものは多くないのだが、やはり「素材の味を生かす」ことを考えすぎて、シンプルな調理に徹したことが、裏目に出た感もある。いずれのメニューも工夫次第では、ミントのポテンシャルを引き出す可能性がありそうだ。次回に向けて、参加者たちの料理のスキル向上を期待したい。

 今回の企画は、参加者の主観で評価しています。ここでの評価が万人受けするかどうかは何とも言えませんが、「塩辛ミント」はオススメなので、興味のある方はぜひ試してみてください。
※今回登場した料理はすべて、参加者が食べました。

ページ上部に戻る